【 おぼろと おふろ 連載 .03 】銭湯(1010)の日

公開日:2024年10月07日

カテゴリ:おぼろコラム, おぼろとおふろ

おぼろとおふろ
文・撮影:奥野靖子(銭湯ОLやすこ・銭湯大使)

【 おぼろと おふろ 連載 】

連載3回目。

今回は銭湯OLやすこさんが、銭湯への思いをエッセイにしてくれました。

日に日に暑さが遠のき、夏が終わったんだなと実感するこの時期。
想定外に身体が冷えてしまった帰宅時にはお風呂が恋しくなります。優しく身も心もほんわか温めてくれる銭湯で、ゆっくりとした時間をたまにはすごしてみませんか。

【 おぼろと おふろ 連載 .03 】銭湯(1010)の日

今日は、銭湯(1010)の日。風呂の日でもなく、温泉の日でもない。
でも、銭湯って何だろう? 数年前、家族が亡くなった頃。私なりの答えを見つけた。

当時、大好きな銭湯に行く気力も沸かなかった。
日常が失われ、それは取り戻せるものではない…と。

そんな時、示し合せたように銭湯が姿を現す。地元から東京に戻る車中で、偶然にも見えちゃった。暖簾まで、フワッと揺れちゃって。「あぁ、銭湯に呼ばれている」ぼんやりと思ったけど、景色はすぐに遠のいた。東京に戻っても、その情景は脳にこびりついていた。でもなんだか、賑やかな場所に行くのがこわかった。
そうこうしているうちに用事ができ、銭湯Y湯に行くことになった。

暖簾をくぐり、カウンターへ着いた時。
「やすこちゃん、お帰り!」横で女将さんが両手を広げている。
あぁ、この胸に、埋もれていいの…だよね…!?
吸い込まれるように女将さんに身を任せた。
「よく、がんばった!」
背中をドンドンと力強くたたいてもらう。

喪が開けた私に、女将さんからのエール。
「うれしい…」
思わずその言葉がこぼれた。
大泣きしそうだったので、あわてて浴室に向かった。

久しぶりに「うれしい」って言ったな、私。
薬湯に浸かりながら思った。
本来、女将さんに「ありがとうございます」と言うところだろうに。
でも、うれしかったんだもん。
そう思うとやっぱり涙がにじんできた。

涙の始末がどうしようもなく、カラン前に座る。
しばらく出番がなかったせいで、乾いた風呂道具。
お気に入りの軽石。お気に入りのガーゼタオル。
私、これが好きだったんだ。
タオルをキュッと絞る。私の肌を撫でる。
そうして私の心はちょっとだけ前に進めた。

これが私の思う、銭湯という場所。
私のもうひとつのお家。

奥野靖子(銭湯OLやすこ)さんプロフィール

北海道出身・在住。現在は東京・札幌二拠点で活動。銭湯との出逢いは、東京での忙しい社会人生活で。
社団法人銭湯文化協会任命・銭湯大使、東京都浴場組合・公式ライターとして活動するほか、テレビや雑誌、SNS等で銭湯情報を発信。共著「旅先銭湯2/3/4(さいろ社)」も発売中。2024年10月に発売された「すごい銭湯100」(イカロス出版)では一コーナーの監修を担当。

X(旧Twitter):https://x.com/sento_olyasuko
ブログ:https://note.com/sento_ol_yasuko
 

 

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