【おぼろとおふろ 連載 .01 】 町田市「大蔵湯」

１１０年余、日本のお風呂文化に寄り添いながら時代を紡いできた おぼろタオル。
同じ様に、 人々の生活に寄り添ってきた銭湯を紹介します。

紡ぐ人：土田太一さん（東京都町田市大蔵湯代表）

大蔵湯を紡ぐ想い

2000年、大蔵湯の経営に本格的に携わりました。

勤めていた会社を退職したきっかけは、父の様子を見て。
身体が弱ってきたかな と思ったんです。
でも今、父は私よりも元気でいてくれています。
運営は、父母、妻、子どもの5 人です。
代々続けられている事は、うれしいですね。
昭和41 年からの歴史なので。

月並みな言葉ですが 「支えられてやっている」と思います 。
家族経営の秘訣なんて、わからないですけど・・・
全員が根っからの風呂好きですから 、続いているのかもしれません。
休みの日も遠くの風呂まで出かける程です。

ウチは昔から、「助け合いの銭湯」ですね。
体育会系から文化系の方も、高齢の方も若者も、まぁ色々な方が同じ風呂に浸かります。
それでいて、誰かが困っていたら、助ける。
実際大蔵湯も、お客さんである保険屋さんや修繕屋さんに依頼をしていますね。
お客さん同士で挨拶を交わすうちに、背中を流しあったり、お茶に行く仲になったりしている様です。
以前は、大蔵湯の常連さんで飲み会もありましたね。
この付き合い、スーパー銭湯ではなかなか無い事でしょう。
そういう場としての価値は、変えたくなかったですね。

新しく紡ぐ

2016年、大蔵湯は大幅なリニューアルをしました。
銭湯建築士の今井健太郎さんと、１年以上かけてああでもないこうでもないをしました。

最初に守りたかった事は、元あった「銭湯らしさを活かす事」ですかね。
高い天井、湯気抜きのある窓、大きな壁面、格天井、木製ロッカー・・・。
先代が築いたモノを活かし続けたい気持ちと、新しくなっても、懐かしく感じられる銭湯にしたかったのはあります。

一方で、ジェットバスなど音のする設備をあえてつけない判断もしました。
意図的に静寂を作ったんです。これは従来と違う方針でした。
響くのは、湯口の音、カランの音、お客さまのささやきです。
これが「妙に落ち着く」と言われますし、「サイレント銭湯」と、褒めてくれるお客さんもいます。

静寂が整ったら、あとはお湯で。「軟水」にこだわっています。
やっぱり、家じゃ味わえない体験をして欲しいですから。
肌や髪にもやさしいといった効果もありますけど、明らかに触り心地がいい湯って、スグうれしくなるでしょう。
触り心地で言うと、浴槽の床も。
大きな中温浴槽は檜、高温浴槽は岩、水風呂はモザイクタイル。
温度によって肌当たりが違うから、フンパツしましたよ。

実はリニューアルの時にイメージしたのは、「温泉地にある公衆浴場」でした。
上質な湯を気兼ねなく楽しんでもらって、自然と地元の方が集っている様な場です。

それがリニューアルで実現できたし、今も続いています。

＜おふろ情報＞

取材・撮影：奥野靖子（銭湯ОＬやすこ・銭湯大使）

【 町田市「大蔵湯」】
住所：東京都町田市木曽町522
※駐車場16台あり
※小田急線町田駅よりバス停「滝ノ沢」下車　徒歩約３分
設備：軟水風呂（中温・高温・水風呂）、サウナ

●公式ホームページ：http://ookurayu.com/
●公式Twitter：https://twitter.com/OokurayuTaichi/
　
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奥野靖子（銭湯ＯＬやすこ）さんプロフィール

北海道出身、東京在住の会社員。「銭湯はもう一つの我が家」とたとえ、人との関わりに癒されながら、日本各地の銭湯を巡っている。
社団法人銭湯文化協会任命・銭湯大使、東京都浴場組合・公式ライターとして活動するほか、テレビや雑誌、 SNS 等で銭湯情報を発信。
共著「旅先銭湯 2/3/4 （さいろ社）」も発売中。

Twitter：https://twitter.com/sento_olyasuko
ブログ：https://note.com/sento_ol_yasuko